恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「ちょっとすみません」
ひと言断って立ち止まり、よくよく見てみると、留めていたボタンが単に取れたわけではなく、根元の方がはがれたような状態だった。
いっそのことストラップ自体を外そうかとも思ったが、さすがにそこまでの怪力ではない。
「どうかしたのか?」
「パンプスが……」
梓がそう言った途端、一樹がその場にしゃがみ込む。
「これが取れちゃったのか」
「大丈夫です。このままでも歩けなくはないですから」
ストラップがひらひらするし、甲が浅めのため踵がパカパカしそうだが、履いていられないわけでもない。
「それで大丈夫なわけがないだろ。映画の前に買い替えよう」
「えっ?」
一樹はそう言うなり、梓の手を取ってエレベーターに再び乗り込んだ。