恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
拒むのは時間の無駄だと頭の隅ではわかっていた。梓がいくら拒絶しようが、一樹はきっと試着させるだろう。
そうはいっても、これまで頑なに履かずにきたハイヒールを試してみるには、かなりの勇気と根性が必要だ。
梓の心の中に根深く居座るコンプレックスのひとつなのだから。
「ほらほら。映画の時間が迫ってるぞ。サイズは?」
そう急かされれば、これ以上嫌だと駄々をこねているわけにはいかない。
いい大人の女が、履く履かないで言い合いになるのはカッコ悪いし、観ようとした映画を逃すのも避けたい。
「二十四センチです」
梓はしぶしぶ答えて椅子に腰掛けた。
壊れたパンプスを脱いで、美しいデザインのものに足を滑らせる。すると、硬そうに見えたインソールが意外とやわらかく、フィット感が気持ちいい。
「立ってみて」
一樹に手を貸してもらい、ゆっくりと立ち上がる。