恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

「次は久城社長の挨拶ですね」


進行表のタイムスケジュールでは、社長挨拶は午後七時半からとなっている。梓が腕時計を確認してみると、あと十五分だった。
しかし会場内を見渡してみても、その姿はどこにもない。


「そろそろ待機してもらった方がいいと思うけど、社長どこにいるのかしらね。私、ちょっと探してくる」


絵梨にそう言い置き、梓は下りてきたばかりの螺旋階段を上がっていく。
パーティーの進行を担当している総務部が手配して、すでにどこかで待機してもらっているのかもしれないが、きまじめな梓は放っておけなかった。

男性用のトイレからさっきの男がちょうど出てきて、梓に気づき微笑みを浮かべる。
それに笑みを返しつつ会釈で通りすぎようとすると、「あの」と声をかけられた。


「はい」


足を止めて男に身体を向ける。今度はなんだろうか。
両手を前で軽く揃えて目線を合わせたところで、騒がしい物音と人の声が通路に響き渡った。

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