恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

◇◇◇

映画館に到着すると、上映時間まであと十分に迫っていた。
ほかの観客の列に倣って進んでいくかと思いきや、一樹は途中で左に逸れる。トイレかと思ったら重々しいドアを開けて、梓を中に入らせる。

そこに足を一歩踏み入れた梓は、思わず「わぁ」と声を漏らした。プライベートルーム型のバルコニー席だったのだ。
丸いフロアライトが灯り、座り心地のよさそうなソファとオットマンが置かれている。黒で統一されたシックな空間だ。


「どう? 気に入った?」
「はい、とっても」
「実はここ、会社を初めて間もなくの頃、俺が担当したデザインなんだよね」
「そうだったんですか」


そういえば、施工実績の中に映画館もあったのは梓の記憶にもある。

スクリーンに向かう開口部は、緩やかな曲線を描いたアール状。天井はドームハウス風に丸みを帯びていて、やわらかさを感じさせる。
空間全体が直線ではなく曲線でできており、上質な寛ぎを与えてくれそうだ。


「素敵ですね」
「だろう?」

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