恋の餌食 俺様社長に捕獲されました

一樹のことは社長として尊敬しているが、それとは違う感情が芽生えそうで怖くなる。
ところが梓が横目で見てみた一樹ときたら、それはまったく気にもならないらしく、スクリーンを真っすぐ見て、映画を堪能している。

(どうして私ばっかり……)


そう恨み言を思っても、しっかりとつながれた手を解ける気はしない。梓が少しでも動かそうものなら、すぐにぎゅっと握られて元の位置に戻されるのだ。

そのうえ、ときおり指先で梓の手をくすぐったりもする。
そんなことをされて映画を観ていられるわけがない。結局梓は、中盤からラストにかけて、映画の内容が全然頭に入ってこなかった。

激しいアクションシーンを観ているはずが、神経が手に集中しているため視線が向いているだけ。耳に入る大きな音も、ほとんどがシャットアウトされたようだった。

エンドロールが終わり、場内が明るくなると、一樹は手を解いて大きく背伸びをした。


「おもしろかったなぁ。ラスト目前のティガーのアクション、あれは圧巻だった。さすがアクション俳優ナンバーワンと呼ばれるだけはあるな」


そんなに素晴らしいアクションなら、ぜひとも見たかったと思っても後の祭り。

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