恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「そうだったんですか」
「そうだったんですかって、なんだよ。ちゃんと観てなかったのか?」
「……はい」
目を真ん丸にする一樹を見て、梓がシュンと肩を落とす。本当に残念でならない。
「眠ってたのか?」
「違います。一樹さんが手を握ってるから……」
「……へ?」
「ですから、一樹さんに手を握られていたので、映画に集中できなかったんです」
どうせならラストまで気づかずにいたかった。途中で気づく中途半端な集中力なら、こんな場で必要ない。
一樹は瞬きをして唖然としたかと思えば、ふっと笑みを漏らした。
「あのさ、それ、計算して言ってる?」
「……計算ですか?」
なんの話をしているのかわからず、今度は梓が目をぱちくりとさせる番だった。
「なんなんだよ」
一樹はせっかく整えてある自分の髪を手でくしゃっとかき回しながら、鼻を鳴らした。