堅物社長にグイグイ迫られてます
「ったく、相変わらず危なっかしいなお前は」

頭の上から聞こえる不機嫌な声。どうやら足を滑らせた私を御子柴さんが片手で支えて抱き留めてくれたようだ。

私の両手は御子柴さんのシャツをぎゅっと握っている。無意識に手が伸びて転びそうな自分を支えようとしたのかもしれない。

「す、すみません。ありがとうございます」

お礼を言って顔を上げると、思っていたよりも近い位置に御子柴さんの顔があることに気が付き思わずドキッと鼓動が跳ねた。

不意にとはいえ、御子柴さんと抱き合うような形になっている今の状況が途端に恥ずかしくなってしまう。

すぐに御子柴さんの体から離れようとしたけれど、私を支えるために腰に回っていた御子柴さんの手になぜか力がこめられる。そのままぐっと強く引き寄せられて、先ほどよりも体が密着する。

私、御子柴さんに抱き締められてる?

突然のことに困惑してしまい、まるで金縛りにでもあったかのように体がピクリとも動かない。けれど、それとは正反対に私の心臓は動きを早める。

もしかして私、ドキドキしてる?

相手はいつも怒られてばかりの御子柴さんなのに。
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