堅物社長にグイグイ迫られてます
「御子柴さん、どこ行くんですか?」

カフェを出ると、華やかなショップが立ち並ぶ通りを御子柴さんの背中を追いかけながら歩く。そういえば今日呼び出された理由を私はまだ教えてもらっていない。

行き先が気になって声を掛けたけれど返事がない。人通りの多い道だから周りの音にまぎれて聞こえなかったのかもしれない。もう一度同じことを尋ねようとしたところで、御子柴さんの足がとまった。

「ここだ」

その視線の先には、ブランド物にはあまり興味のない私でも知っているほど有名なブランドの直営店舗があった。

先に入店した御子柴さんのあとに続いて私も店内へと足を踏み入れる。すると、ふんわりとした甘い香りに包まれた。

店内を進みながら、並んでいる衣服に下げられた値札をちらっと覗き込んで目を見開く。

た、高い!

冬物コートが約九万、ジーンズが約四万、セーターが約五万って……。

「――痛っ」

小さなハンドバッグを見ながら、その値段が私の一ヶ月分の給料よりもはるかに高いことに驚いていたせいか、前を歩いていた御子柴さんが立ち止まったことに気がつかなかった。
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