堅物社長にグイグイ迫られてます
「あの人ならできる」

けれど御子柴さんがはっきりとそう言い切る。

「各方面に顔が知れているし、親父の言うことには誰も逆らえない。あの商業ビルも御子柴商事と昔から懇意にしている企業が経営元だ。俺が設計を請け負ってると知った親父が声を掛けて白紙に戻させたんだろう」

「……」

私は思わず言葉を失ってしまう。そしてふと御子柴さんから以前聞いた"建築家になろうと思ったきっかけ"を思い出した。

小学生の頃に理想の家というテーマで描いた絵がコンクールで賞をとり、それをお父さんが喜んでくれたことか嬉しくて建築家になろうと決めたと言っていた。

夢を叶えた今もお父さんに認めてもらおうと必死に仕事をしていたのに、そのお父さんに仕事を奪われてしまうなんて。

今の御子柴さんの気持ちを考えると胸がぎゅっと締め付けられて苦しくなる。

「そんなのひどいです」

気が付くと本音がぽろりとこぼれていた。そんな私の肩を佐原さんがポンポンと優しくたたく。

「とりあえず今はいつも通り仕事をしようか」

そう言った佐原さんもまた力ない笑顔で笑っている。

「そうだな」

御子柴さんがパソコンに手を伸ばし起動ボタンを押した。


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