堅物社長にグイグイ迫られてます


その日の食卓はしんと静まり返っていた。

最近の残業の原因であった商業施設の設計の仕事がなくなってしまったからか、定時で仕事を切り上げた御子柴さんと今日は一緒にマンションまで帰ってきた。

晩ご飯は御子柴さんがさっと作ってくれたチャーハンだ。それを二人で向かい合いながら言葉を交わさずに食べている。

昼間の一件のせいか空気がとても重たい。何か話し掛けようと思うけれど何を話し掛けていいのか分からないまま食べ終わってしまった。

グラスに入った冷たいお茶をゆっくりと喉に流し込んでいると、ふと御子柴さんに「百瀬」と名前を呼ばれる。私はグラスから口を放すと、それをテーブルへ静かに置いた。

「お前にこれやっとくから」

そう言うと御子柴さんはズボンのポケットから封筒を取り出して私に渡してくる。受け取るとずっしりと重みがある。

なんだろう?

そっと中身を確認した私は思わず目を見開いてしまう。

「な、な、なんですかこれ?!」

「給料三ヶ月分だ。とりあえずそれだけあれば新しい家見つけて必要なもの揃えるぐらいはできるだろ。足りなければ言え。もう少し渡すから」

封筒の中身は、御子柴さんは私の給料三か月分と言ったけれど、たぶんそれよりももっと多い札束が詰まっている。
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