この空の果てで
「顔真っ赤」
「戸部くんもね」
「ナツキって呼んでよ。俺のこと。
野木さんのこと、コハルって呼んでいい?」
「うん、ナツキ。よろしく」
「いい名前だよな、コハルって」
「あまり意識したことなかった。
むしろ子供っぽいって思っていたくらい」
「俺は落ち着いていていい名前だと思うけど」
ふと、真顔になった。
いつもよりも目が艶っぽく見えるのは気のせいだろうか。
「……キス、していい……?」
同じようなトーンのはずなのに、言葉はまるで大人びていた。
水深数百メートルで聞いているような、それほど現実味のない言葉に思えた。
「……」
返事を待たずに頬に手を添えられる。
そこだけがじわりと暖かくなっていく。
氷がゆっくりと太陽の下で溶かされるような。
机を挟んで向かい合っていたのが少しずつ近づいてくる。
よく分からない。
それが頭の中を支配している。