犬猿だったはずの同期を甘く誘惑したら
え、マジで?そんな顔してくれんなら俺ほんとに飲むけど。
なんて思いながらも、守屋の気持ちが完全にこっち向いてねぇのにそんなことになっても虚しいだけだし、今身体だけを手に入れたら、かえって守屋の気持ちを手に入れるのに苦労しそうだな。
と思い直してやっぱり今日は真っ直ぐ帰るべきだと自分で自分を律した。
でもいつもと違う守屋をちょっとイジメられるいいチャンスを俺が逃すわけがない。
「俺、今日飲むつもりなかったんだけど。
守屋がこの先を期待してるなら、
飲もうか?俺。」
そう言うと、守屋はわかりやすいようにピキっと固まった。
なにそれ。可愛すぎねぇ?
と思っていると、
ホールスタッフが前に置かれたグラスにお冷を注ぎ、守屋の席だけに綺麗な赤いワインを置いた。
ちらっと守屋と目が合って、ニヤッと笑うと、顔がさらに真っ赤になった守屋が、
「アンタってほんと性格悪い。」
とぷりぷり怒り始めた。
あーやべー。
マジで可愛すぎ。
今日のデートは大成功だな〜
なんて上機嫌になりながらナイフとフォークを握る。
必死で食事に集中しようとわざとらしく「美味しい」なんて呟く彼女を見ながら俺はしみじみと幸せを感じた。