犬猿だったはずの同期を甘く誘惑したら



桜木を駅まで送って、自宅に帰る。


モノトーンで静かな雰囲気の部屋に所々散らばった色物の小物の中の1つ。

一昨年に行った、同期旅行の写真が鮮やかな青いフレームの中で輝いている。



この時も俺はなんにも出来なかったんだよなー。


このまま他の男にとられていくなんてゴメンだ。



絶対明日こそは守屋を誘おう。と決心して俺は眠りについた。




次の日。



意を決して
「おい、守屋。今日、1杯付き合ってよ」
と守屋に話しかけたのに、アイツはまるで聞こえてねぇみたいに無視を決め込んだ。


ウソだろ...


とは思ったけどとりあえず俺はめげなかった。


俺の言葉なんて無かったことにしてカタカタとパソコンを打ち続ける守屋に、自分のデスクの椅子をコロコロと転がして彼女のイスにコツンと当てて、不機嫌極まりない表情を作る。



久しぶりに近づいて、香った守屋の匂いに酔いそうになりながら、触れ合った肩にドキドキしながら。


「なぁ、守屋。今日も1杯付き合えよ」


俺は彼女を誘った。
久しぶりにこんなにも近い距離で目を合わせてしまうと、愛しい気持ちが溢れてしまう。


そんな俺の気を知ってか知らずか、守屋はふいっとパソコンの画面に顔を戻す。



「久しぶりだし、仕方なしよ。」



なんて少し嬉しそうな表情を浮かべて言う彼女はやっぱりめちゃくちゃ可愛かった。



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