異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~


 衝立の向うからは、もれなく寝息から寝言にいびき、寝返りで寝台の軋む音まですべて筒抜けだった。
 ライからは同居初日に『俺のことは置物とでも思ってくれてかまわん。過剰に気を張らず、普段通りに過ごしてくれ』と、こんなふうに告げられている。
 そんな巨大すぎる置き物なんて邪魔なだけで、逆に嫌……。一瞬そんなことが脳裏をよぎったが、私はこれから指導を乞う立場。だから指導官であるライが黒と言ったら、白でも黒! そう思い直し、よぎった思いにはペシッと蓋をして、ふたつ返事でライとの同居生活を開始したのだ。
「マリーナ、眠れないのか?」
 すると案の定、私が寝返りしまくっていたのがライにも筒抜けだったようで、衝立を挟んだ向う側からライが小さく問いかけた。
「ううん、そんなことないよ。うるさくしてごめんね? 静かに寝るね、おやすみなさい」
 そう。空腹で眠れないなんて、今さら珍しいこともない。
 でも、ライの眠りまで妨げるのは本意じゃない。寝返りは、ちょっと控えめにしなくっちゃ。


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