異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~


 へへへっ。
 かみかみ、はぐはぐ。 ……あれぇ?
 どんなに噛み進めても、フライドチキンからは一向にうま味がでてこない。
 ぺろ、ぺろ。ちゅぱ、ちゅぱっ。
 たまに舐め上げて、吸い上げて、そしてますます一生懸命、私は噛んだ。
 ガブッ、ガブッ、ガジガジ。……ガジ、ガジ。
「……むにゃ、顎、疲れてきちゃった……。もうフライドチキン、いいや……。次、ドーナツ」
 私がドーナツに手を伸ばそうとしたら、もういらない、したはずのフライドチキンが迫る。
「……おい、マリーナ」
「えぇ? もぅ、チキンはいらないよぉ……」
「マリーナ、起きろ。もう起きる時間だ」
「……やぁ。これから私、ドーナツなの……」
「マリーナ!」
 ブワッサァァアっと、上掛けが取り払われて、その衝撃にビクンッと跳ねる。
 パチクリと瞬いて、霧散したフライドチキンやドーナツの残像を惜しむ。


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