異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~
「なに、たいしたことはない」
ライは、私の視線を遮るように、大きな手を首にあてがう。
だけど目にした無数の歯形は、私の脳裏にしっかりと刻まれていた。
……どうしたも、こうしたもない。 だって、犯人は私だ……!
私が夢でガジガジしていた筋っぽい物……、あれはフライドチキンなんかじゃない ! 私は、空腹の勢いでライを貪った!!
「あの、おふたりとも、すでに食堂に朝食の準備ができて——」
「私がライを噛んでしゃぶって舐め回して、夜通し貪っていたんだね?」
私の声と、なかなか食堂に現れない私たちを呼びに来たアイーダの声が重なった。
「あ、アイーダ。おはよう」
半分開いた扉から顔を覗かせた状態で、アイーダは言葉の途中を不自然に途切れさせたまま固まっていた。開いたままの口がはくはくと動き、目は目玉が落っこちそうなくらいまん丸に見開かれている。
もちろん、私の「おはよう」にも返答はない。
「い、いっ、いゃぁぁあああああっっ! 姫様の、ケダモノーっ!!」
ワンテンポ遅れ、アイーダの絶叫が騎士宿舎中に轟いた。