異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~


 目の前で、手に手を取って抱き合う陛下と王妃様は、悲壮感にあふれている。
 なにか慰めを口にするべきとは重々理解しつつも、俺の脳内は、王妃様が語った『意図せずひょっこりできてしまった』という破壊力抜群の台詞が反響しており、気の利いた台詞のひとつも出てこない。
 すると、王妃様が陛下の胸から顔を上げ、俺を見つめた。年を重ねても衰えることを知らない王妃様の美貌が、あふれる涙で濡れていた。
「ライ・ザック、あなたに頼みたいのは愛娘、マリーナの減量よ」
 その王妃様の口から飛び出したのは、予想もしていなかったまさかの依頼だった。同時に疑問符が浮かぶ。
 ……マリーナ様は、減量を必要とするほど太っていただろうか?
 俺はかつての記憶を たどり、以前に一度だけまみえたマリーナ様の立ち姿を思い浮かべた。そうすれば、そのまぶしい微笑みにばかり気を取られていたが、十年前のマリーナ様が立派な肥満体形であったことが思い出された。
 なるほど、仮にマリーナ様が、当時の肥満体形を維持したまま成長したとすれば、減量は必須と思えた。


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