異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~


***

 騎士食堂での夕食。四人掛けのテーブル席で、俺の横に座ったマリーナが、大きなスプーンに少量のシチューをすくい上げ、ちびりちびりとすすっていた。
 以前のマリーナならば十中八九、直接皿を口につけ、ふた口で食べ終えていたに違いない。それが今はどうだ。マリーナはこの二週間で、味わいながら食べるということをしっかりと習慣づけていた。
「……あぁ。お皿、舐めたいなぁ」
すると、底の見えかけた皿を見たマリーナが、吐息と共にポソッとつぶやく。
 聞こえてきた、なんとも正直すぎる心の声に苦笑が漏れた。つぶやきはとても小さいから、おそらく隣に座る俺の耳にしか届いていない。ちなみに心の中の葛藤に忙しそうなマリーナは、心の声が表に出てしまっていることに、まるで気づいていない。
俺の本音としては、皿を舐めてくれても一向にかまわないのだが、騎士らの目が多くあるこの場でそれをするのは、少々差し障りがあるように思った。
「……ううん、駄目。人には絶対、越えちゃいけない一線ってあると思うの。ここでそれをしたら、きっと私、人としてのなにかが終わる……」
 俺が一応の注意喚起を促すべきかどうか思案していると、横のマリーナから、さらにポソポソと小さなささやきが聞こえてきた。


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