異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~
「スロウ・スタータ、出稼ぎ騎士だと自ら明かしたお前にひとつ伝えたい。ちなみにこれは、騎士団長としての言葉ではない。単に、同じ騎士という職務に従事する、年長者の戯言と聞いてくれ」
スロウが扉に手をかけようとしたタイミングで、俺はその背中に向かって声をかけていた。
「かつての俺もまた、騎士となることは単なる手段にすぎなかった。俺の場合は騎士団で心技体を鍛えて伸し上がり、いつか俺を陥れた者らを見返してやると、そんな復讐心がすべてだった。だが不思議なもので、仲間らと切磋琢磨して精進する中で、俺の中で復讐心が占める場所は段々と小さくなっていった。一時期は、意志を 貫徹できぬ己の優柔さを嘆きもした。けれど途中、そうではないと気づいたのだ」
スロウが、ゆっくりと俺を振り返る。
その目は微かな驚きと、そして、困惑に揺れていた。
「日々を過ごせば、思いは変化する。人とはきっと際限なく変化をし、そして成長をするのだ。だから変化は、けっしていとわしいことではない。仮にお前が本気で騎士道を極めれば、お前はきっと大成するに違いない。とはいえスロウ、お前が選ぶ道には正解も不正解も存在しない。退団し、十代続いた家業の再興に尽力するもいいだろう。お前の思う道を極めろ」