異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~


 俺の言葉にスロウはクシャリと顔をゆがめ、強い眼差しで俺を見つめる。
「どうして……」
「ん?」
 聞こえてきたスロウの声は、小さく震えていた。
「どうして俺に、そんな言葉をくださるのですか?」
「ふむ。これはただの俺の勘だが、お前にはなかなか見どころがあるような気がしたのだ。若い頃の足踏みも遠回りも、ときには犯した過ちすらも、長い人生ではすべてが未来の糧となる。ではな」
 俺に勝るとも劣らぬ、分厚い筋肉に覆われたスロウの肩。
 その肩をトンッと叩き、俺は立ちすくむスロウの脇を通り過ぎて、ひとり談話室を後にした——。

***

 これが昨日、スロウと取引をした談話室での一幕。
「第二師団副師団長リィ・ヴァーウンド、俺だ。ここを開けろ」
「おや騎士団長、このようにはやくからいったい何事ですか?」
 ノックと共に告げれば、俺の声を聞きつけたリィ・ヴァーウンドが、怪訝そうな様子で扉から顔を出した。


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