異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~


 菓子の指示にしても同様で、侯爵は必ず自ら列に並び、その労を匂わせて、残すことへのうしろめたさを刺激しろと記している。しかしこの男はあろうことか、訓練日の部下に甘言をささやいて買いに向かわせることを選んだ。
 これらを鑑みれば、侯爵は息子の愚鈍さによって足をすくわれる結果となったと言っていい。しかしこれもまた、侯爵の身から出た錆。
「なにが軍務規律違反だ!! お前たち、こんなことをしてただで済むと思うな!? 父上に言って厳しく追及してくれる!」
 ……果たしてこの男は、事の重大さを正しく理解しているのだろうか? いいや、なにも理解していないのだ。
 これから追及されるのが、自分であるということに欠片も気づかない。いや、気づこうともしない。
「リィ・ヴァーウンド、事はもう、騎士団の軍務規律違反にとどまらんのだ」
「なにをわけのわからない事を言っている!?」
 いまだ勇ましく喚き立てるリィ・ヴァーウンドに、俺は憐みのこもる目を向けずにはいられなかった。


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