異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~


 お母さまの腕の中は、優しくて温かな匂いがした。
 そうして私とお母さまはしばらく抱き合ってから、そっと抱擁を解いた。
「……でもさお母さま、淑女っていうのはちょっと、過大評価がすぎるっていうか……」
「あら、マリーナ! それこそ過小評価がすぎるわよ! 私はこんなに素晴らしい娘を持って、本当に誇らしいわ!!」
 なぜかここで、お母さまがニンマリと笑みを深くして、横の鞄をあさりだす。
 ……え? な、なに?
 お母さまの言動に圧倒され、私の体が若干、うしろにのけぞる。
「これを見て!!」
 お母さまが鞄から引っ張り出したなにかを、ズイッと差し出す。
 反射的に、受け取る。
「ここに向かう途中で購入したのよ! もう、街中がこの話題で持ちきりになっているわ!! マリーナ、世間が認めた淑女とは、あなたのことよ! あなたは立派よ!!」
 勢い勇んだお母さまが拳を握り、何事か叫んでいる。だけどそれらは、私の耳を素通りした。
 ……な、なっ、なんじゃこらぁぁあああーーっっ!!


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