異世界平和はどうやら私の体重がカギのようです~転生王女のゆるゆる減量計画!~

「なんだ? いらんのか?」
 ……あぁ、あ、あ、あ——。
 前のめりの不自然な体制で固まったまま、ギシギシと軋む首を巡らせる。
「ぎ!? ぎっ、ぎゃぁぁああああっっっーー!!」
 手持ちランタンでボバッと暗がりに浮かび上がる、チーズを片手に微笑む般若!!
 目にした瞬間、私は野太い雄叫びと共に、無様にも腰を抜かした。 その衝撃で、私は腕に大事に抱えていたパンとハムを床に落とした。
 二重、三重の衝撃に、泣く。
「マリーナ、夜のうちにバゲットが短くなっていようとは、さすがに俺も想像していなかった」
「……へ、へへっ。テンプーラ王宮の怪談? なんちゃって……」
「冗談はこのくらいにして、今後のことは部屋で相談しよう」
 日本人の必殺技、『笑ってごまかす』は、どうやら不発に終わった模様だ。しかも不発に終わった必殺技は私自身に跳ね返り、数倍もの威力でもって胸を抉る。
 へへっ……、私って、ほんと駄目だ。
 もう、口角を上げ続けているのは限界だった。へにゃりと口角が下がり、顔はくしゃくしゃにゆがむ。


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