うたた寝
彼と彼女は付き合っていないけれど、それは時間の問題だと思ってる。彼は彼女に好意をもっているのは周りから見ても明らかだし、彼女だって満更じゃ無さそうだ。そもそも、学校で人気者な彼に好意を向けられて、喜ばない人間なんていないだろう。
三人で道を歩き始める。僕と彼女と彼。
「テスト近いよね。二人とも、勉強してる?」
「俺はやばい。今回、補習に引っ掛かりそう…」
「…僕は普通」
「普通とか嫌みか。化学、エステル化がどうのこうのってところから全然分からないから、教えてくれない?」
「学年トップを利用するなんてズルい!私も、数学教えて!全体的に危ういの!!」
「別にいいけど」
補習回避だと彼女と彼はハイタッチ。僕が教えるから補習を回避できるとは限らないし、テストを受けるのは個人なのだから、まだ喜ぶには早いと感じる。
他愛のない話をしていると、見えてきた校舎。校門をくぐれば、彼女とはお別れ。理系である僕達と文系である彼女は下駄箱の場所が違うのだ。
彼と二人で歩く。朝早いので、道には誰もいない。僕達のローファーがアスファルトを踏む音だけが聞こえる。急に黙り始めた彼を僕は不思議に思いながら朝の空気を吸う。隣の彼は深呼吸をして何か意を決したようだった。
「好きな人とか、いる?」
彼にしては珍しい毛色の質問。少し緊張しているような表情で、誰もが知ってる彼が彼女のことが好きということでも告白するのだろうか。