墜落的トキシック
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「ねえねえ、ハル」


つん、とハルの腕を小突いた。
そうすれば、彼は「んー?」と間延びした穏やかな返事を落とす。


今日もいつも通りの帰り道。
太陽はまだ空に残っている。じわじわと夏が近づいてきているんだなあ、と思いながら、私は自分の首元に手をやった。



「昨日、ネクタイ入れ替わってしまってたみたい」



しゅるり、ネクタイをほどいてハルの前に掲げると、彼はぱちぱちと瞬きを繰り返した。



「……ほんとだ。気づかなかった」



私がかざしたネクタイと、それからハル自身が締めているネクタイを交互に見比べて。たった今気づいたとゆるゆると瞠目した。



「ごめん、俺のせいだね」




俺が取り違えたから、と謝るハルに首を横に振る。


元々は制服を着たまま眠りこけてしまった私が悪いんだ。しわにならないようにってわざわざ着替えさせてくれたハルには、感謝しかない。


それに、別に、ネクタイが入れ替わったくらい。




「困ったこと、何もなかったから大丈夫だよ」

「……そっか」




頭髪検査の日だったら先生に怒られたりしたかもしれないけれど、幸い今日は何もなかった。


や、何もなかった、というのは少し嘘。
侑吏くんに変な言いがかりをつけられたけれど。でも、それくらいだ。





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