墜落的トキシック
「花乃」
「んぎゃっ!?」
うわさをすれば、侑吏くん。
突然後ろから声をかけられたものだから、驚きのあまり声が変に裏返った。
気持ちを落ち着けてから振り返ると、視界に入ってきたのは呆れたような侑吏くんの表情。
「……怪獣」
ぼそりと呟かれた単語。
それに、苛立ちよりも懐かしさを先に感じたのは、それくらい佐和侑吏という男に振り回されて、振り回されることに慣れてきた証拠なのかもしれない。
「相変わらず愛嬌のかけらもねーな」
「これでも一応女の子だし!」
ふんっ、と言い放つ。
そして一瞬の間に侑吏くんの返答を予想して。
『女?どこが』もしくは『生物学上、ね』。
きっと嫌味っぽい笑み付き、なあんて。
なのに。
「知ってる」
あっさり頷いた侑吏くんに度肝を抜かれた。
え……?
キャラ違くない?
戸惑って、固まる。
なんか、侑吏くん、マイルドになった?
最近、ちょっと変だなあとは思っていたけれど。
「勉強すんだろ」
「……あ、うん」
座るように促されて、金縛りがとけたみたいに、ぺたん、と腰を下ろす。
机が向かい合わせでくっつけてある。