墜落的トキシック
答えた私の顔を見て、侑吏くんはお決まりのパターンか、と言いたげに表情を歪める。
『また仁科か』って言いたいんでしょう。
そうだよ、その通りだ。
「おまえ、浴衣とかって着るタイプなの」
「浴衣? 着るよ、人並みに」
だって、浴衣を着るとハルが嬉しそうにしてくれたから。
去年は黒地にピンクの花が咲いた浴衣、『可愛いよ』って褒めてくれた。
そういえば、あのときはまだ髪が長かったな。
「でも、今年は行かないと思う」
ハルと行くのがいつのまにか恒例になっていたけれど。
今年はそんなわけにはいかないだろうし、他の誰かと行く予定もない。
「あっそ」なんていかにも興味なさげに返事した侑吏くんに今度は私が質問する。
「侑吏くんは?」
「何が」
「お祭りとか行く?」
「行かない。だるい」
即答。
あまりにきっぱりと言い放つものだから、ちょっと笑ってしまいそうになる。
まあ、たしかに侑吏くんが好き好んで人混みの中へ飛び込んでいくとは思えないけれど。
えー、でも。
「侑吏くんは女の子はべらせてそう」
「……どういうイメージだよ」
「あながち間違いじゃないでしょ。不特定多数の女の子とたわむれてる」
侑吏くんが群れるのはいつも女の子。
群れている、というか侑吏くんに女の子たちが群がっているんだろうけれど。でも、侑吏くんはそれを拒絶しない。拒絶しないどころか、食べてるよね。
もし侑吏くんがお祭りに行ったとしたら、自分から女の子を引っかけたりはしないだろうけれど、逆ナンされて最終的にはたくさんの女の子に囲まれている。
その光景、想像にかたくない。
────「別に、俺だって」