墜落的トキシック



「……?」



突然、独白のようにつぶやいた侑吏くんに首をかしげる。

すると侑吏くんの瞳が切れ長に細められた。
何かを狙うように獰猛に光を宿す瞳にとらわれて。


見たことのない目。




「俺だってそれなりにできる」


「……はい?」


「……一人だけを大事にしようと思ったら、ちゃんと優しくできんだよ」




心なしか、その声がかすれているようで。
それが妙に切実に聞こえて。




……意外、侑吏くんってそんなこと言うんだ。



そう思うと同時に、何故か心のはしっこあたりを引っかかれたように、ちくりと痛みが走った。




「でも、侑吏くん好きな人いないよね」


「……」


「……」




黙り込んだ侑吏くんをじい、と見つめると。




「っは、おめでたい頭してんなまじで」





乾いた笑い声を落とされて、自然と眉間にしわが寄る。





「……どういうこと?」

「さあ?」




ひょい、と肩をすくめてみせた侑吏くん。
はぐらかされているんだとわかったけれど、彼の性格上これ以上粘ったって無駄だろう。


それに、きっと大したことじゃない。




「そういえば、気になったんだけど」

「……」

「侑吏くんの好きなタイプってどんなの?」




これは純粋な疑問だ。


だって、侑吏くんの周りには色んな女の子がいるから。
彼の好みはよくわからない。



「ロングのストレート、茶髪、つり目、鼻が高い、背も高い、大人っぽい、あとは胸」

「……嫌がらせ?」




侑吏くんがつらつらと述べた特徴は私の正反対。

怪しげに上がった口角から察するに、おそらく確信犯だ。



どうせ私は鼻も背も低いし童顔だし、胸もないですよ、と少しいじける。
別に侑吏くんのタイプに近づきたいわけでもないけれど。




「おまえの男の趣味は聞かなくてもわかるけどな」

「え?」



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