墜落的トキシック
「俺の正反対、だろ」
自信たっぷりな侑吏くん。
うん。たしかにハルは侑吏くんの正反対……だけど。
「そうでもないよ?」
だって。
「私、侑吏くんの顔、好きだし」
「っ、」
まじまじと見つめながら、やっぱり顔は綺麗なんだよなあ、と思う。
「侑吏くんってやっぱりかっこいいよね」
「……」
性格にはかなり難ありだけど、と心の中で付け足す。
「……侑吏くん?」
あまりに無反応の侑吏くんに、さすがに不思議に思って顔をのぞき込んだ。
すると、物凄い仏頂面、なのに。
「ねえ耳、赤い……」
不自然に紅く染まった耳。
引き寄せられるように、つん、と触れると。
「っ、おまえなあ!」
「な、なにっ?」
急に声を荒げた侑吏くんにおののいて、距離をとる。
そんな侑吏くんは、ますます仏頂面になっていた。
「あー、まじで無理。本当に無理。おまえのそういうところが────」
中途半端なところで口をつぐむから。
その先が気になって首をかしげる。
「何?」
「別に。……知らなくてもいいよーなこと」
それっきり何も言わない侑吏くん。
なにか逆鱗に触れてしまったのだろうか、と心配したけれどそういうわけではなさそう。
静まりかえった教室は居心地が悪くて。
「あの、侑吏くん」
「……なに」
「ずいぶんファンシーな付箋使ってるんだね」
ふと目についた、侑吏くんの教科書に貼ってあるピンク色の付箋。
話題を作るべく話を振ったのに。
「別にどうでもいいだろ」
「どうでもって……!」
あまりに適当な返事に、さすがに言い返すべく口を開きかけた。
けれど。
「休憩はもう終わり。さっさと勉強するぞ赤点女」
ぴしゃりと遮られてしまう。
そして、そのあとの侑吏くんは妙にそっけなかった。