墜落的トキシック
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翌日。
放課後の始まりを告げるチャイムと共に教室を後にした。


9月14日。ハルの誕生日だ。
私より一足先に17歳になる。



今日のこのあとの予定は、まずケーキ屋さんに予約してあるケーキを取りに行って、それからハルの家へ直行だ。


昨日訪れた麻美の紹介してくれたお店には、見るからに美味しそうなケーキが並んでいて。その中でも甘さひかえめのものを選んだの。


ハルの口からはっきりと聞いたことはないけれど、甘さが強い食べ物はたぶん苦手だと思う。ずっと一緒にいると、そういうことは意識しなくともわかってくる。


ちなみに、ハルには『先に帰ってて』と連絡済みだ。すぐに家に行くから、とも付け足しておいた。


毎年恒例とはいえ、一応サプライズだからね。ケーキを取りに行くのに付き合ってもらうと本末転倒になってしまうもの。



そんなことをふわふわと考えながら下駄箱に向かい、自らのローファーに手をかけた、ちょうどそのとき。



ぐっ、と誰かが私の腕を引いた。
それも、結構な強さで。



引っ張るというよりは、引き留める、に近い。

驚いて固まった、私の耳元で。




「……行くなよ」




懇願するように囁いた、その声は。



「侑、吏くん?」




思わず手に取ったはずのローファーを下駄箱に戻してしまう。
振り向くと、そこにはやっぱり侑吏くん。



掴まれたままの腕。
手のひらからぴりぴりと何かが伝わってきて、痺れそうだ。




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