墜落的トキシック
.
.


「……はあ」


ぎりぎりだった。
閉店間際のケーキ屋さんに駆け込んで、予約していたケーキの箱を受け取って。


やっとのことでハルの家に到着。
予定よりもかなり遅くなってしまった。


それもこれも、ニッセンが雑用を押し付けるからだよ。
心の中でぶつぶつと文句をぶつける。



ハル、待ってるかなあ。
ケーキ、喜んでくれるかな。



そわそわしつつ、インターホンを押す。




────ピーンポーン




チャイムの音が鳴り終わる前に扉が開いた。



「花乃」

「あ、ハル。ごめんね、予定より遅くなって」



玄関で、靴を脱いで家に上がる。
いつも通りだと思っていた。

ハルが次に言葉を発するまでは。




「随分遅かったね」

「え、」

「こんな時間まで、何してたの?」



背筋がひやりとした。
柔らかい表情、優しい口調。

だけど、声色が凍りつくくらい冷たい。



「怒ってる……?」



待たせてしまったから、だろうか。

でも、普段ならこんなことでハルは怒ったりしないよね。




「怒ってないよ」

「でも、」

「聞いてるだけ。誰と、何してたかって」




誰と、に明確なアクセントがついていた。
わからない。

何が、ハルをこうさせているのか。
だから正直に答えるしかなくて。



「これを、お店まで取りに行ってて」



手に持った紙箱を軽く示す。
ハルはそれを一瞥して。



「その前」




< 238 / 323 >

この作品をシェア

pagetop