墜落的トキシック
俺が彼女に差し出したのは優しさでも温もりでもなかった。
好きとか欲しいだとか、どろどろに増幅した恋情だけを向けていた。
花乃は俺のことを好きじゃない。
そのことを気づかせたくなかった。
だけど、好きという気持ちは厄介で。
好きだと思えば思うほど、愛しいと思えば思うほど、幸せを願ってしまうのだ。
恋しいと愛しいが釣り合ったときに、ようやく花乃自身のことを考えて。
『別れよう』
俺はもう壊れてしまったから
きみにはせめて壊れないでいてほしいと思った。
だけど、その反面。
叶うなら俺のそばにいてほしい。
捨てきれない恋情が邪魔をして、なにも覚悟ができていないまま中途半端にきみを手放した。
この後に及んで、本気になればいいのに、と一縷の望みをかけてしまった。
花乃が俺に本気になんてならないことを知っていながら、本気で欲しがってくれれば全部差し出すのにと、思ったのだ。
「久住さんは侑吏と付き合ってるんだよっ?」
「……」
「失恋したなら、もう諦めればいいのに」
恋を失うと書いて失恋というのなら、
俺は失恋なんてしていない。
きっと失恋できた方が幸せなんだろう。普通は。
だけど無理だ。
俺はずっと好きだ。この先も、ずっと。
誰よりも、とかじゃない。
比較対象なんてない。花乃だけが。