スパークリング・ハニー
毎日近くで見ているこもりんが言うならそうかもしれない。
そう思って、もう一度、篠宮くんに目を向けるけど、やっぱり。
「すごく上手いことに変わりはないんだけど、んん……ちょっともどかしいというか」
「もどかしい?」
「夏の試合のときの篠宮くんとちょっと違うというか……。なんて言ったらいいんだろ、かゆいところに手が届かない、みたいな」
言葉にすると消えてしまいそうなほどの些細な違和感。なんとか伝えようと、ぽつり、ぽつりと呟くとこもりんは納得したように頷いた。
「ああ、そういうこと」
「……?」
「あの日の朝陽はすこぶる調子良かったからね」
「あの日?」と首を傾げると、「光莉が応援しに来てくれた日」とすかさず補足してくれる。
「どっちかというと、今の、“もどかしい”方の朝陽の方が、本物かも」
「どういうこと?」
「朝陽のプレーには波があるんだよね。あの日みたいにすごく調子良い……かと思えば、そのすぐあと思い出したかのように調子を崩すというかさー」
「思い出したかのように?」
「そう。がくんと調子を崩すのはいつも、良いプレーをした後なんだよね。そのあとで我に返ったように悪化する。そうだなー、たとえるなら、まるで『これ以上上達したらだめ』って誰かに止められてる、みたいな感じで」