スパークリング・ハニー
せかせかと手を動かしていると、篠宮くんが僅かに表情を柔らかくする。
「瑞沢、来てくれてありがと」
「え……」
「小森の代わり、ほんと助かる」
「っ、そんな、めっそうもない!」
ぶるぶる、と勢いよく首を横に振る。
全身で思いっきり否定した私に、ふは、と篠宮くんが笑った。
「こもりんみたいに上手くはできないし!」
「助かってるよ、ちゃんと」
「それなら、よかったですが……」
なぜかかしこまった話し方になってしまう。
そんな私に篠宮くんはもう一度ちいさく笑った。
笑っている、篠宮くん。
その笑顔が本物か偽物か、なんていちいち見定めるような真似をしてしまう自分が嫌で、篠宮くんの方をあまり上手く見られなかった。
そろそろ完成かな、ってカレーを煮込んでいた火を止める。
鍋を移動させるべく、持ち手に手をかけたタイミングで。
「っ!?」
思わず後ずさる。
だ、だ、だって。
コンロの近く、キッチンの片隅でなにか、物陰がカサコソ動いた気がして。
息を吸って、吐いて。
小さく深呼吸、心臓を落ち着けたあとで、もう一度その場所を覗き込む。
「ひ……っ!?」