スパークリング・ハニー
もやもやと無意識に立ちこめてくる暗雲には気づかないふりをする。
「あーいうのってなんて言うんだろーな。嫁タイプ? 家庭的なのってよくない?」
「男心に刺さるよな、ぐっと来るっていうか……」
ああだこうだって、そのあとも続くくだらない議論。
しばらく黙って耳を傾けていたけれど。
その話題の中心にいるのが、瑞沢だってことが、だめなのかもしれない。
────けっこう、いやかなり、気に食わない。
瑞沢のいいところをみんなが知ることは、たぶんいいことのはずなのに、彼女のいいところなんてこれ以上他の誰かが見つけなくていい、なんて思ってしまう。
「……瑞沢は、だめ」
半分、無意識だった。
あとから思えば、もう半分はしっかり牽制。
盛り上がるみんなを制するように、口にしてしまう。
すると一瞬、部屋は静寂に包まれて。
「は!? まさか、朝陽って瑞沢ちゃんのこと……!」
「まじっすか!?」
どっと、うるさくなった。
……だったら、悪い?
なんて心の中だけで呟いて、目を閉じる。
────悪いよ、わかっている。
瑞沢に手を伸ばせるような男には俺はなれないのに、瑞沢のことが好きだとか、瑞沢のことを好きになるなとか、そんなことを言うのはゆるされないって頭ではわかっている。