スパークリング・ハニー


さっきとは正反対のことを言う。


戸惑いつつ、篠宮くんの表情をうかがうと、柔らかくて優しいおひさまみたいな笑顔。


────の隙間に、切ない、が不器用に挟まっていた。




「……っ」




昨日も今日も、あまりにも篠宮くんがいつも通りにふるまっていたから、見逃していた。


こうして、忘れかけた頃に突きつけられてしまう。



篠宮くんの心には今も、暗い何かが棲みついていて、その何かは確実に彼の心を蝕んでいる。




そのことを裏づけるかのように、見つけてしまったのだ。


────それは、お風呂からあがったあと、ゆんちゃんと二人、部員のみんなの鞄を移動させていたときのこと。





「これって、篠宮くんの、だよね」




チャックがたまたま半開きになっていた鞄。

見覚えがあるのは、それが篠宮くんのもので、教室でも何度も目にしていたからだろう。


中から物がこぼれてしまわないように、チャックを閉めるべく手をかける。




「……え」



その拍子にふと、見つけてしまったの。


開いたその隙間からちらりと覗く、白い封筒。



その真ん中には、たしかに篠宮くんの綺麗な筆跡で書かれていたのだ。




──── “退部届” と、その3文字が。




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