スパークリング・ハニー


そんなある日、突如サッカーボールが触りたくなったんだ。


部屋の片隅に転がっていたボールがやけに目について、長い間放置していたそれを手に取ってみたくなった。衝動に近かった。


それで、ボールを抱えて近所の公園に行ったんだ。




「……っ、は」




久しぶりに足先でボールに触れてみる。
こんな感触だったっけ。



とん、と足の甲にのせて。

とん、とん、とん、と続けてリフティングをする。



やっぱ、しばらく触っていないとなまっている。


思ったように操れないボールは、ふとした拍子に捕まえそこねて、勢いよくどこかへ転がっていってしまう。



そこで、我に返った。


俺、何やってんだよって。
サッカーはもう辞めたんだ。

今更、ボールに触れたところで何の意味もない、なんて考えてうつむく。



そのときだった。




「あのう……」




おずおずと頭上から遠慮がちな女の子の声がする。
びっくりして、慌てて顔をあげると他校の制服を着た女の子が立っている。


この前練習試合であたった中学の制服だ。

髪はハニーブラウンで、くるんと毛先が外にはねていた。





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