スパークリング・ハニー
「つーか、瑞沢こそ、小森と約束してない?」
「あっ」
ごめん、こもりん。
篠宮くんと喋っているうちに、すっかり忘れてしまっていた。
ごめんね、ゆるして。
心の中で平謝りしつつ、連絡するべくスマホを開くと、メッセージ1件、ちょうど、こもりんから。
「こもりん、用事があるから先帰ってるね、って」
「そっか。じゃあ……」
篠宮くんが口を開いた、ちょうどそのタイミングで、ぐうーっと音がした。
その正体は、空気の読めない、私のお腹の音。
「ひあっ!ちょっと、篠宮くん、聞かなかったことにしてください……っ」
けっこう大きな音で鳴ってしまった。
恥ずかしさのあまり、お腹をおさえて、くるりと篠宮くんに背を向ける。
ばかばかばか!!
なんで私のお腹の虫さん、こんなときに!
タイミングくらい考えて……!
背後から、くくっ、と篠宮くんの噛みころしたような笑い声が聞こえて、それが恥ずかしさに追いうちをかける。
穴があったら入りたい。切実に。
「なんか食べに行こっか」
「う、ほんと、うちの腹の虫がすみませぬ……」
「俺もお腹すいたし。それに、どうせ完全下校の時間だから、学校出ないとだし」
気をつかってくれているのか、そうでないのか。
どちらにせよ、恥ずかしさのあまり、真っ赤な顔のまま、教室を出るべく荷物をまとめたのだった。