スパークリング・ハニー
教科書とノートを広げて準備すると、向かいの篠宮くんが頭を少しかがめて私の手元をのぞきこむ。
すると、それに合わせてさらっと流れる篠宮くんの短い髪。
つやつやのキューティクルが、ひかりをつかまえてきらきらしている。
毎日のようにグラウンドで強い日差しを浴びているのに、きれいで傷みのない髪の毛は純粋に羨ましい。
ぜひとも使っているシャンプーを教えてほしい。
「今回のテスト範囲はどう? けっこう苦手?」
こてん、と首をかしげた篠宮くん。
うーん、苦手、というか。
「ええっと、かなりヤヴァいの」
「ふ、ヤヴァいんだ」
ヤバい、じゃなくてヤヴァい。
発音まできっちり私に合わせた篠宮くんが、笑いつつ肩を揺らしている。
「じゃあ基礎のとこからやろっか」
「うう、ありがとう」
きっと、篠宮くんには基礎演習なんて必要ないのに、あくまで私に合わせてくれるらしい。
優しいなあ、ほんとうに。
「問題解いてって、わかんなくなったら言って」
「うん。……あの、すぐに呼ぶかもだけど、大丈夫?」
「はは、大丈夫。そのためにいるんだし」