スパークリング・ハニー


申し訳ないし、極力自力でがんばろう……と心に誓ったものの、結局すぐに篠宮くんの力を借りることとなった。

案の定というか、なんというか。
あまりにも情けなくて、ちょっとヘコむ。

そんな私だけれど、篠宮くんは嫌な顔ひとつせずに、自分の手を止めて付き合ってくれた。



「篠宮くんの解説、超わかりやすいね」

「そう?」

「なんだか数学得意になれそうな気がするもん」




丁寧かつ的確。

こんがらがった糸をほどくような説明と、絶妙な進行スピード。



授業のテンポ感では着いていけず、置きざりになっていた私でも、これなら理解が追いつく。


得意になれそう、はさすがに気のせいだとは思うけれど。



「先生とか向いてそうだね、塾とか学校とか」

「うーん、俺にはちょっと無理あるかも」



そうかなあ。
そんなことないと思う。


でも、篠宮くんが先生だったら、みんな、先生のこと大好きになっちゃうかも。



先生になった篠宮くんの姿を想像しながら、教えてもらった解法で応用問題に向き合うと、なんということでしょう。

あんなに頭を抱えていたのが、嘘のようにするする解ける。篠宮くん、天才すぎない?




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