スパークリング・ハニー
「篠宮くんって、どうやって数学得意になったの?」
裏ワザがあるならぜひとも知りたい、と思ったものの。
「数学だけは元々できるんだよな。なんでだろ」
「う、羨ましいかぎりです……」
要するに、持ってうまれたものが違うということだ。
真似できない、と思わずうなだれる。
「でも、瑞沢は国語できるだろ」
「え?」
「よく褒められてるじゃん」
どうして、それを。
国語はたしかに得意な方に入るの。
先生に『よくできていますね』って言ってもらえることもたしかにある。
だけど、べつにぶっちぎり1番とかじゃない。そこそこ得意、にとどまる程度だ。
それなのに、覚えてくれているなんて。
篠宮くんって、ほんと、周りのことをよく見ている。
「俺、国語はけっこう苦手で。だから、今度は瑞沢が俺に国語、教えてよ」
「今度……っ?」
「そう、今度」
篠宮くんの口から、次があることをほのめかすような言葉。
これは、篠宮くんの優しさ……そう、優しさだ。
だけど、理性とは反対の方向へ期待が先走る。
最初で最後の夢みたいな時間だと思っていた。
でも、また、今度があるって期待してもいいの?