スパークリング・ハニー


首をかしげる。
どうして、そんなマイナスな言い方をするんだろう。

謙遜だとしたら、すごくもったいないな、と思う。



「それでもすごいと思うもん」

「中途半端でも?」

「っ、中途半端……なのかは私にはわからない、けど」



だけど。



「篠宮くん、サッカーが好きでしょ? ずっと続けていられるほど好きなことがあるって、あたりまえじゃないよ。すごいことだよ」

「……」



篠宮くんが不自然に視線をそらす。
そして。


「俺、べつにサッカー、好きじゃないよ」




そんな篠宮くんの言葉に、思わず瞬きをくり返す。
びっくりしたからじゃない。


いや、ある意味びっくり、かもしれないけれど。

それは、篠宮くんがサッカーを好きじゃないこと、に対してではなく。




「どうして、そんな嘘つくの?」



篠宮くんが嘘をついたことに対して、だ。
それも、とてもわかりやすい嘘を。


篠宮くんらしくない。



「嘘、だと思う?」

「うん。篠宮くんはサッカーが好きでしょ?」



それも、きっと、誰よりも。




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