スパークリング・ハニー

「試合がはじまったら、いつもあの辺でかたまってみんなで応援してくれてるよ。置いてあるイスとか、適当に座ってくれて大丈夫」

「なるほど」



観戦に慣れていない私に、こもりんが簡単に説明してくれる。



「ごめんね、マネの方が忙しくて、そっちあんまり構ってあげられなくて。男ばっかでむさくるしいと思うけど……」

「ううんっ、お気遣いなく!」



応援サイドをちらりと見て、申し訳なさそうに眉を下げるこもりんにひらひらと手を振った。

マネージャーの仕事には詳しくないけれど、いつもとっても忙しそう。きっと、選手とはまた違った苦労が絶えないはず。



その間にも止まることなくせかせか動く、こもりんの手。
これ以上邪魔してはいけない、とそっと距離を置いた。



すると。



「こもりーんっ」



私と入れ替わるように、こもりんへ駆け寄るすらっとした人影ひとつ。



「みなみ、今日も来てくれたの?」

「まあね。これ差し入れ」

「うわ、いつもありがと」



さらりと綺麗な髪がなびく。
その正体はみなみちゃん。


彼女が差し出したクーラーボックスを覗き込んで、こもりんがもう一度 「ほんとありがとう〜」と口にする。



< 53 / 299 >

この作品をシェア

pagetop