スパークリング・ハニー


そっか、試合が終わったからといってのんびりできるわけじゃないもんね。

今から片づけをしたり、ミーティングがあったりするのだろう。



遠ざかる篠宮くんの背中を見送ってから、今度こそ帰るべく、忘れものがないか、辺りを見回して。


────あ、ちなみに、みなみちゃんは、このあと用事があるとかで一足先に帰っている。



ひとり、駅まで向かう途中に篠宮くんがくれたキャンディをひとしきり眺めたあと、封をやぶいて、口の中に放り込んだ。



「おいしー……」



ハチミツの柔らかい甘さが、舌の上でほどけて、ふわりと口内に広がる。

鼻腔をくすぐる香りが、懐かしい記憶を連れてきた。



────実は、篠宮くんが私にキャンディをくれたのは、これがはじめてじゃない。



きっと篠宮くんは覚えていないけれど、前にも一度だけあるの。


あのときもこれと同じ、ハチミツのキャンディだったな。



それは一年半よりまだ少し前のこと。
何を隠そう、私が篠宮くんに憧れるきっかけになった、あの日のことだ。




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