スパークリング・ハニー


にっこり笑顔を向ける。
明るく弾むような声を意識した。


すると、心配そうな表情を浮かべたままその女の子は「じゃあ……」と試験会場の方に足を向ける。



ほっと胸を撫でおろした。

私を気にかけてくれている間に、あの子が万が一にでも遅れたりなんてしたら……と思ったから。そんな迷惑はかけられない。



「それに、私は、大丈夫」



ふるえる声でそっと呟く。
めったに風邪もひかないし、怪我をしたってすぐに回復するし、体はつよいほうだもの。


そう思うのに足先や指先、ひいては顔から血の気が引いていくのがわかる。寒さにぶるっと体が震えた。


また誰かが私のために足をとめてくれる……なんてことにならないため、ほどけた靴ひもを結ぶふりをして、うずくまる。



「大丈夫だよ、大丈夫だもん」



おまじないみたいに繰り返し唱える。
元気がとりえなの、笑顔がとりえなの。

だから……絶対、泣いたりしないもん。


そう思うのに、意志とは反対に目頭があつくなる。



苦手な勉強、私なりに頑張ったこととか、背中を押してくれた先生とか、いってらっしゃいって送り出してくれた家族のこととか。


頭をよぎっていく。
みんな、あんなに応援してくれたのに。


いつも元気なくせに、こういう大事な日にだめになっちゃうんだから。




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