夕闇の時計店
賑やかな出店の数々。鈴の音色。

美味しそうな匂いが漂う。

「お祭りみたいですね!」

「欲しいものがあったら言えよ?」

「えへへ、ありがとうございます」

歩きながら食べられるものを買って、出店を見て回る。

ほんとに、人の世界と変わらないなぁ。

フランクフルトにたこ焼きにりんご飴……たまに見たことのないものがあるくらいで。

それにしても……

「あら夜一様、お久しぶりじゃないですか。寄っていってくださいな、おもてなししますよ」

緋瀬さんはどこに行っても声を掛けられる。

時折、艶めかしい女性に呼ばれることもあり、妬ける。

「…………」

「安心しろ、俺は衣月しか目に入らん」

「!?私、声に出して言ってました?」

むにっと頬を指で押される。

「ふくれてたぞ」
< 39 / 62 >

この作品をシェア

pagetop