転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 リゾルデ豊穣祭まではまだ少し日があるものの、すでに準備は始まっていて、後宮内はその準備で慌ただしくなっていた。

 後宮の客人であるヴィオラも、豊穣祭に参加することを求められているとあって、皇宮内をあちこち行き来して準備に余念がない。

 そんな中、ティアンネ妃とすれ違うこともあるのだけれど、ヴィオラの顔を見かける度、彼女の眉間にしわが寄る。

 皇宮内を移動する時、場所によっては馬車と使うけれど、今日は午前中受けたダンスのレッスン会場とクィアトール宮が近かったことから、ニイファを連れて歩いていた。

「この庭園を歩き回るだけで、かなりの運動量になりそう」

「それは否定できませんね」

 くすくすとニイファが笑う。彼女は、ヴィオラの侍女としてあちこちの宮に出入りしているので、この庭園の構造を完全に把握していた。

「――そういえばヴィオラ様。この国に来る途中で、盗賊に襲われたのを覚えていますか?」

「もちろん。忘れるはずないでしょう。ニイファだってそうでしょうに」

 城から外に出ることもほとんどなかったから、盗賊というものに実際に遭遇したのは初めてのことだった。

 馬車が走り出した時の恐怖。湖に転落した時の絶望感。今になっても、思い返せば背筋を冷たいものが流れ落ちるくらいだ。

「……結局、まだ犯人は見つかっていないそうです」

「それは、しかたないんじゃない? あの件ばかりにかかりきりになっているわけにもいかないだろうし」

 庭園の間は、満月宮や新月宮、クィアトール宮をはじめとした星の名を与えられた宮など、それぞれの庭園は灌木によって区切られている。二人はちょうど、次の区画に足を踏み入れようとしているところだった。

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