転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 男にうなずいて見せたものの、ヴィオラの涙は止まらなかった。泣き声は猿轡に吸い込まれていったけれど、零れた涙はひたすら頬を濡らす。

「まったく……だから、子供は面倒なんだ」

 ヴィオラに向かってそう言い放った男は、仲間達の方を振り返った。

「おい、俺は少し出てくる。女と子供に逃げられないようにしろ」

 そう言い残した男は、小屋の扉を開き、外に行ってしまった。どこに行ったというのか――残されたふたりのうちひとりが、ヴィオラの方に目を向ける。

「お前さんも気の毒にな。あのお方を敵に回すとは……」

「おい、ほどほどにしておけよ。この娘を殺すのは面倒なことになるんだ」

(たしかに、私を殺そうとはしていないわよね……逃げ出したことにするって言ってたけど……)

 後ろ手に拘束された手首が痛い。それに、妙な体勢で転がっているので、脚も痛い。床の上でもぞもぞとし、少しでも楽な体制を取ろうとする。

 ごろん、と寝返りを打って、反対側の腕を下にした。ずっと涙が流れ続けていた頬がひりひりとする。

(あのお方を敵に回すと面倒だって誰のこと……?)

 ヴィオラに敵なんているはずもない。唯一思い当たるとすれば、継母のザーラくらいだ。だが、そのザーラも国境を越えたイローウェン王国にいるのだ。ヴィオラにこんな危害を加えるはずもない。

 だいたい、イローウェン王国の服を着ているのに、まったく違うなまりの入った言葉をしゃべる。このふたりがどこの国の人なのかわかれば、考えの幅も広がりそうではあるが聞いたことのない言葉だった。

 出て行った男が戻ってくる気配はない。残ったふたりは、テーブルに座って酒を飲み始めてしまった。

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