転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「――おそらく、医師の助手を抱き込んで、薬もソメカイタケの毒とよく似た作用を持つものを投与する予定ではなかったかと思います。そうすれば、怪しまれないですむから」

 皇妃が公務を欠席する理由は、あくまでも、病気でなければならない。

 自分が決めたメニューで体調を崩したのであれば、それはアデリナ皇妃の落ち度となりうる。

「そうでしょう、ティアンネ妃?」

「な、なんのことかしら。それに、あのポタージュは、皇妃は飲まなかったじゃないの」

「ここにいるヴィオラのおかげです。父上、ヴィオラの持つ特別な力のことは?」

「……なんのことだったかな」

 どうやら、皇帝はヴィオラの持つ特技については覚えていなかったようだ。

 だから、皇帝が首をひねって考え込んでいる間に、リヒャルトはさらりと正解を口にしてしまった。

「ヴィオラは、とても繊細な舌を持っているのですよ。ひと口、口にすれば、材料になにが使われているのかを判断できるほどに」

 ソメカイタケが持つ、本当にわずかな刺激。その刺激でさえも、ヴィオラは敏感に感じ取った。

「ヴィオラの言葉により、計画は失敗してしまった。母上がソメカイタケで体調を崩していなければ、医者も呼びませんしね。病弱――とは言われてますが、日常的に薬を必要とするようなものではない」

 もうひとつ、ティアンネ妃が計算できなかったのは、リヒャルトとヴィオラ、そしての接近だった。

 ヴィオラが、皇妃が懐かしく思う味を再現し、お茶会やピクニックに連れ出したことによって、皇妃は少しずつ健康を取り戻してきた。

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