転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 三十分も歩けば到着するだろうというヴィオラの見込みは、あまりにも甘いものであった。馬車に乗ってからもそれなりに時間がかかったのだから、徒歩ではもっと時間がかかるのだ。

 それに、ヴィオラが履いていた靴は、歩くことに適したものではない。

 晩餐会のために履いたものであり、想定されている歩行距離といえば、馬車から会場内まで往復する距離くらいのもの。

 華奢なヒールは歩きにくく、あっという間に靴擦れができてしまった。

「……もうっ」

 仕方なく、靴を脱いで歩き続ける。

 皇帝も皇帝だ。あの場からヴィオラを追い出そうというのなら、帰りの馬車くらい呼んでくれればよかったのに。

 クィアトール宮周辺に並ぶ建物は、似たような形のものが多い。暗い中ではクィアトール宮を見つけるのも難しく、ようやく帰り着いたのは、晩餐会の会場を出てから二時間以上が経過したあとのことだった。

「た、ただいまぁ……」

「ヴィオラ様、どうしたのです?」

 出迎えてくれたニイファが悲鳴を上げる。大げさな、と思いながら鏡を確認すると、ヴィオラの姿はあまりにも惨めなものだった。

 ドレスの裾は地面に引きずったために擦れて泥まみれ。脱いだ靴は無事だったものの、薄い靴下一枚で歩くことを要求され続けた足は、あちこちに傷ができていたし、靴擦れもかなりひどい。

 途中で事故に遭ったと言われても、驚かないほどのぼろぼろ具合だ。

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